庵治石きっぷ

庵治石きっぷ

石あかりロード記念限定きっぷ
-庵治石による切符という作品―

平成18年1月に合併して高松市となった旧牟礼町では、
石あかりロードというイベントが行われている。

それにあわせて昨年7月に庵治石を使用した
石あかりロード記念限定切符が発売され大変好評であった。

その切符が今年(平成18年夏)も発売されるという噂を聞いた。

地元の石職人によるこだわりの作品で、
2年目ということで昨年のノウハウも生かして、
格段にグレードアップさせているということであった。

高松で公共交通利用促進拡大を掲げて活動している
私たち市民団体ぐるっと高松”-公共交通を育てる会*1では
この庵治石の切符というおもしろい試みを
一足先に取材させていただけるということになった。
ぜひ人気の秘密を探ってみたいと思う。

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市民団体ぐるっと高松”-公共交通を育てる会

			

早速、この石あかりロード記念限定きっぷに中心となって取り組んでいらっしゃる
(有)島本石材工業さん*2を訪問した。

お話をいただいたのは、代表取締役の島本壽さん。
なんとか報道発表用に実物の完成を間に合わそうと多忙の中、
取材に応じていただいた。感謝いたします。

この石あかりロード記念限定きっぷ作製には、

切符ならではの苦労とコストとの戦いとが常にあった。

石による切符。その薄さ。

庵治石と言えば、そのキメの細かさ、優美な光沢、独特の色合い、重量感が特徴で
花崗岩ダイヤモンド」と言われるほど名の知られた最高級の石である。

これまで庵治石で作られてきたのは
墓石などを中心とした大きさのあるものばかりであった。
たしかに、この地域にある石材会社には
加工のためにクレーンのような大型の機材が並んでいる。

しかし、今回は切符という非常にコンパクトなものをつくることになった。
しかも何百枚という数を同じサイズで作製しなければならない。

すべて均一の厚さで薄い板に加工するのは難しい。
これが最初の関門であった。

これは「百件の加工業者があれば百通りの技術レベルがある」という島本石材さんの技術レベルの賜物によるものなのであろう。

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切符作成を可能にする均一に薄く加工する技術

最大の課題、石に文字をどういれるか?

石を切符にする際に、最も難しいのが文字をいれることであった。

切符として機能させるなら、その表面に必要な事項を織り込まなければならない。
それも何百枚も同一のデザインにしなければならないのである。

すぐに思いつくのは、墓石のように石に文字を彫り込むことである。
しかし、そうなると切符がそれこそ転がして運ぶくらいの大きさになってしまう。

小さい文字を彫り込むには、レーザー彫刻という技術もあるが、
全面をレーザー彫刻するにはコストがかかりすぎてとてもできない。
シリアルナンバーのみレーザー彫刻である。)

やはり、石の表面にプリント(印刷)するしかない。
しかし、どうやってやるか。石にインクがひっつくのか。

島本さんはこのプロジェクトプリントを担当された山内繁雄さんと協議を重ねた。

昨年のものでも黒、白の2色が使われている。
様々なインクを試してみたが、やはりだめ。
どうしてもはがれやすい。

プリントに熱を加えてみてはどうかとの話もあったが、
せっかくの庵治石の品質・品位が損なわれるのでだめ。

試行錯誤の結果、
透明(クリア)なインクが最も強いということが分かったので
一番上に透明な色を重ねあわせることでなんとか克服することができた。

この課題のクリアによって、石による切符が日の目を見ることができたのである。
今年は昨年よりさらに1色(赤)増やすようである。

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今年(H18夏)のデザインラフ。白、黒、赤3色使用。

2年目の特徴1、ウォータージェット加工

今年の石の切符の大きな特徴として、
切符らしく上下に切れ目が入っていて左右2つのパーツに分かれるようになっている。

左側の大きなパーツには石あかりロードの記念切符らしく
エリアマップがデザインされており、
右側の小さなパーツには穴が空いており、
紐を通して持ち歩けるようになっている。

この2つのパーツに分けるのにウォータージェットという技術が使われている。
この技術を提供していただいているのは米山製作所(東京*3さんである。

この割れ目は真っすぐ斜めに直線に切れているのではなく、
途中で切り返しがあり、従来の石材加工技術ではとてもできないものだそう。

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左側のパーツサンプル。右辺の切れ目に注目。

そして、今年は切符全体の四隅も角の部分が丸くなっている。
何百枚も手作業で丸く削っていたのでは間に合わない。
これもウォータージェット加工ならではである。

また、小さなパーツにある紐を通す穴、
これもウォータージェット加工によるものである。
たった直径4ミリの穴であるが、この穴を開けるのは難しい。
なぜなら穴は薄い板の2辺の端に近くにあり、
端に近いところに穴を開けようとすると、
従来の方法では石は割れてしまうからである。

紐を通して持ち歩けるようにしたというのは遊び心もということであるが、
このような穴を開けるには特殊な技術が必要で、
石をぶらさげるアクセサリーも他には無い石の記念切符ならではということになる。

ちなみに、この持ち歩くアクセサリーには口にあたる部分にも切れ目が入っている。
言われてみれば気づくが、人の顔をイメージしているということである。
たしかに、鼻の大きなモアイ像をイメージできる。

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穴のある右側のパーツサンプル

このウォータージェット加工の技術、
島本さんは昨年からまた今年もやるならぜひこれをやりたいと考えていたそうである。

この地元の石あかりロードというイベントに
多くの人に関わってもらいたいという思いもあったからだ。

島本さんの熱意に打たれてか、米山製作所さんにも非常に協力していただいた。
利益は決して多くない仕事ではあるが、
石あかりロードというイベント、庵治石の切符というおもしろい企画に
賛同してくれたそうである。

最後には、間に合わないのなら飛行機で持っていこうか、とまで言ってくださったそうで、
熱い職人達の心意気によって今年のグレードアップは達成されている。

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両方のパーツを合わせたサンプル。4隅が丸いのが分かる

2年目の特徴2 金箔満月

さらに、今年の切符には金箔が使われている。
金箔の付いた切符というのは貴重なのではないだろうか。

石あかりロードのイベントは、月の美しい9月にも行われる。
石あかりと合う満月を輝かしたかったということは納得できる。

金箔加工は、(有)庵治美工さんにお願いしてやっていただく事になっている。

これに関しても、とても利益のでる仕事ではなく、無理を承知でお願いして
地域の人と一緒にイベントを盛り上げる気持ちでやっていただくそうである。

そのおかげで、他に類を見ない切符が誕生したのであるから
とてもありがたいことである。

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サンプルの金箔の付いた満月の部分。丸く彫り込まれた中に貼り付けられている。

どうしてこの大きさに?

昨年の記念切符の大きさは縦90mm、横200mmの大きさであり、
今年もほぼ同じくらいの大きさであった。なぜこの大きさになったのか。

最初はこんなに大きくなるとは考えていなかった。
はがきか名刺サイズを想定していたそうである。

しかし、昨年の切符は、ご存知のとおり、
ことでん全線全駅の名称がデザインされており、
プリント担当の山内さんとの相談の結果、
これが「榎井」などの細かい文字が読み取れる最小のフォントであり、
この部分はこれ以上小さくできなかったそうである。

他の部分で多少は小さくすることもできたが
表面が文字ばかりというのではなく、
なんと言っても庵治石の持つ魅力である石の素材感をださないといけない
ということでこの大きさになったということである。

今年はデザインも一新され、大きさも再考されたが、
小さくすると、かえってチープに思われるのではないかということで
昨年の大きさを踏襲されたようである。

また、厚さについても、もっと薄くすることも可能であったが、
薄くした場合に割れそうな不安感を与えないようにと言う事と、
厚くした場合の重さを考え、
両者のバランスをとった結果ということである。

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プリント直後で、ウォータージェット加工前の状態の実物。
2枚一組で切り出されるのが分かる。

そもそも、どうして石で切符を作ろうと?

島本さん

私がまちづくり協議会(石あかりロードを主催する団体)に

入ったのは遅かったんですよ。

 

 それでも私ができることはないか。

このイベントを盛り上げることができないか。

 石でできた切符というのは考えていたんですよ。

 というのは、私はプレートのような小さくて薄い石の加工品を

すでに作っていたからです。

 

 最初はみなさん、できるわけがないと半信半疑でした。

 

でも、サンプルを作って持って行くとびっくりされ、

ひょっとしたらできるかも、となり実現できました。

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石あかりロード記念限定きっぷ作成の中心となった島本壽さん。

取材を終えて

取材させていただいたこの石あかりロード記念限定きっぷは、
他には類を見ないプレミアの価値のある切符であると思う。

なぜならば、単に切符というよりも、
島本さんはじめとする熱意と数々の技術が織り込まれた作品だからである。

表面のデザインに凝った限定切符というのは珍しくはない。
しかし、これは庵治石という高級素材を、困難の末、
見事に組み合わせてできあがっている切符なのである。


ちなみに、この取材を通じて様々なことを感じさせてくれた。

何より、今までにはなかった切符作りという新たな課題にチャレンジし、
それを克服することで、技術の進歩や他の技術とのコラボを達成することができ、
そのノウハウを蓄積できたのではないかと思う。

消費者のニーズの多様化が進むなかで
今後様々な商品開発に応用できそうであり、
地域の特産である庵治石の可能性を感じさせていただいた。

また島本さんがおっしゃっていたように、
この切符づくりプロジェクトにより、
ウォータージェット加工の米山製作所さん
サンドブラスト金箔加工の庵治美工さんを
石あかりロードというイベントに巻き込むことができた。
一緒に盛り上げようというスタッフが増えたことはたいへん嬉しいことである。

何かしらに多くの人に愛着をもってもらうためには、
まずは関わってもらうこと、コミットメントすることだと思う。
さらなるファンづくりのための確実な一歩を踏み出せたと感じる。


この切符は、わが香川高松から全国へ自信を持って送り出せる切符である。

イベントである石あかりロードも地元住民の方達の手作りながらも
創意工夫により成長を続けている素晴らしいイベントである。

ぜひこの切符をきっかけに、石あかりロードへもお越しいただきたい。
できれば、公共交通機関で。

 ”ぐるっと高松”公共交通を育てる会 会員 山田努

「この切符をきっかけに、

ロマンチックな”石あかりロード”へ

行ってみよう!」

「世界に唯一つの 庵治石でできた

“石あかりロード記念限定きっぷ”で

電車に乗ってみよう!」

 “ぐるっと高松”公共交通を育てる会より

*1:「ぐるっと高松」公共交通を育てる会:http://grutto.g.hatena.ne.jp/

*2:有限会社 島本石材工業:http://www.shimamoto-s.co.jp/

*3株式会社 米山製作所:http://www.yoneyama.co.jp/

お問い合せは、メールアドレスを記入して、こちら(http://grutto.g.hatena.ne.jp/about)のフォームから。